ミスチル桜井さんが好きすぎて・・・

~目じゃないとこ耳じゃないどこかを使って見聞きをなければ見落としてしまうブログ~

斜陽~美しき過去を想いながら憂うモノローグ~ 後編

こんにちは、口笛少年です。

『斜陽』の深読み後半です。

前半がまだの方はこちらからどうぞ。

斜陽~美しき過去を想いながら憂うモノローグ~ 前編 - ミスチル桜井さんの脳内を勝手に深読みしてみた

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ビルの影が東に伸びて

家路を辿る人の背中が増えてく

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影が東に伸びて→日が西に傾いて=夕方になって、

家路をたどる人の背中が増えてく→帰宅ラッシュが訪れた

ですね。

一番では長々と、心中のことが語られてきましたが、ここからはしばらく、目の前の現実が描かれています。

人が集い笑っていた一番の終盤とは打って変わり、どこか寂しげな印象を受ける2番の序盤です。

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その営み それぞれの役割を

果たしながら 背負いながら歩いてく

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1つ1つの背中に、家庭や仕事、人間関係など色んな悩みがあって、別々の立場があるのです。

当たり前のことだけど、ぼんやりと俯瞰で見ていると、忘れがちな真実かなと思います。

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憂いをおびたオレンジ色の空

眩しさは消えてもまだ温かい

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ここで初めて、「オレンジ色」という色が出てきました。

それまで出てきた「青」「蒼」という色は、心の中にある空の色でした。

対して、現実世界で目の前に広がるのは、オレンジ色の空でした。

それも、憂いをおびた空でした。

“美しい過去”(青い空)と“憂いをおびた現在”(オレンジ色の空)との対比によって、まさに『斜陽』という曲名を鮮明に表現しています。

 

そして、ここの深読みポイントは「まだ温かい」という部分です。

小説『斜陽』では、貴族という身分から没落し、恋や人生に絶望した主人公・かず子が、“他人もみな辛い中を必死で生きているんだ”ということに気付いたことで、自分も頑張って生きていこうという気持ちが生まれます。そして、それを暗示するように「朝ですわ」というセリフが生まれます。

オレンジ色の、憂いをおびた空に浮かんだ、西へ没していく太陽。

しかし、やがてその眩しさが消えても、次の日になれば必ず日は昇ってきます。

太陽が冷え切ってしまうことは絶対にない。ずっと温かいままなのです。

だから、この「まだ温かい」には、きっとまた、朝日が射して、「青い空」が帰って来るだろうという「救い」の意味が含まれているような気がするのです。

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懐かしい歌をふと口ずさめば

愛しき人の面影がふと浮かび上がる

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ここで、初めて「愛しき人」という特定の個人を表すような単語が出てきました。その「愛しき人」に何かを伝えようとしているわけではありませんが、初めてかつ唯一の、広い意味での”登場人物”となります。

 

“懐かしい”歌を口ずさんで、愛しき人の面影が浮かぶということは、その「愛しき人」はもう近くにはいないのでしょう。

 

そしてここで、初っぱなの「夏が終わる」という歌詞が効いてきます。

懐かしい歌=メジャーデビュー曲『君がいた夏』と考えると、

この「愛しき人」とは、『君がいた夏』に出てくる「君」だったりして・・・なんていう想像もできます。

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心の中にある青い蒼い空

今尚 雲一つなく澄み渡る

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1番と全く同じ歌詞ではありますが、「愛しき人の面影が浮かび上がる」を受けていることで、それが果たす意味はかなり具体的になります。

つまり、その「愛しき人」と過ごした日々は、青く、時に蒼かったのだと思います。

(「青」と「蒼」、それぞれの意味は前編を参照)

でもやはり、今となってはきれいに澄み渡った思い出として記憶されているんですね。

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その眩しさに また目を細めて

今日も僕は大空に手を伸ばしてみる

 

伸ばしてみる

伸ばしてみる

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「雲一つなく澄み渡る空」のような過去。

そんな過去が眩しく感じてしまうということは、今の状況は明るくないのでしょう。

だからこその、『斜陽』という曲名です。

そして、そんな「僕」は、今日も「大空に手を伸ばして」います。

美しい過去を想いながら、また戻りたいなと願う。

当然、何度手を伸ばしてみても、過去には戻れません。

でも、それを受け入れられずにいる「僕」。

その胸中は、ラストの「伸ばしてみる」が3回続くリフレインが物語っています。

 

ここらへん、何度も出てきた『君がいた夏』の歌詞にも重なります。

 

おもちゃの時計の針を戻しても

何も変わらない

Oh I will miss you

 

「過去には戻れない」という意味に、こんなに豊かな表現を再び当てはめてくる桜井さんの言葉のセンスはすごいなと思います。

 

またさらに深読みすると、”心の中にある大空に手を伸ばしてみる”ということは、この時期の桜井さん自身もやっていたのかな?という想像もできます。

この頃の桜井さんは45歳になり、家庭も持って、地位も得て、反骨的なロックソングを作るのは難しくなってきたでしょう。

年を重ねることで生まれていく人間的な深みもあり、ファンとしてはそんな桜井さんの変化を、同じ時代を生きる中で追いかけて、各々のやり方で味わっているわけですが、桜井さん本人としては、もしかすると物足りなさを感じる部分はあったのかも知れません。

だからあえて、メジャーデビュー曲を連想させる歌詞を書き、それを90年代のミスチルを思わせる雰囲気のメロディーに乗せることで、その物足りなさを満たしていた・・・という想像も出来てしまいます。

 

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。