『ヒカリノアトリエ』~ひたむきな生き方に寄り添う、優しさあふれる応援ソング~ 後編
ヒカリノアトリエの考察、後編です。
前編はこちら
『ヒカリノアトリエ』~ひたむきな生き方に寄り添う、優しさあふれる応援ソング~ 前編 - ミスチル桜井さんが好きすぎて・・・
「一体何の意味がある?」
つい 損か得かで考えてる
でも たった一人でも笑ってくれるなら
それが宝物
2番に出てくる「虹」は、少し毛色が変わっているように思います。
夢や理想といったような「虹」ばかり追い求めていると、「こんなことをやって意味があるのかな?」と、不安になってくることがあるかも知れません。
あの遠くの空にかかる大きな虹にたどり着くためには、これをやることで損にならないか・・・
得なことって何だろう・・・?
これをやっていくことで、あの虹に向かってちゃんと進めているのかな・・・?
だけど、いったん肩の力を抜いてみようよと。
そんなに大きな夢=虹を掲げなくても、目の前の人や愛する人がたった一人でも幸せな気持ちになってくれればそれで良し、という考え方だってできるんじゃない?
誰の胸の中にだって薄暗い雲はある
その闇に飲まれぬように
今日をそっと照らしていこう
どんな成功者だって必ず、悩みや苦しみがあるはず。
虹がかかる前の雨が降り出しそうな、暗い雲。
その闇に飲まれたら、ずっと苦しい思いをするかも知れない。
その雨が降らないと虹はかからないかもしれないけど、それでいいじゃないか。
今この時を照らしていこうよ。
過去は消えず
未来は読めず
不安が付きまとう
だけど明日を変えていくんなら今
今だけがここにある
暗い闇に紛れた、つらい過去があったかもしれない。
これから、どんな天気に巻き込まれるかも分からない。
でも、今存在しているのは、そして二度と訪れないのは、“今”なのだから、たった今、この一瞬を大切にできればそれでいいじゃないか。
遥か遠く地平線の奥の方から
心地好い風がそのヒカリ運んで
僕らを包んでく
この曲が主題歌となったドラマ『べっぴんさん』の主人公は、裕福な家庭に育ちながらも戦争によって急に生活が苦しくなります。しかしそこから、0から事業を起こして成功をおさめていきます。
まさにそのストーリーのごとく、戦争のような真っ暗闇が辺りを覆っても、朝日は必ず昇ってきて、周りを照らしてくれる。
それを、単に「ヒカリに包まれる」のではなくて「風がヒカリを運んでくる」という表現をするところが、とてもおしゃれだな、なんて思いました。
たとえば100万回のうち
たった一度ある奇跡
ただひたむきに前を見てたら
会えるかな
数少ないチャンスを信じていくことが、雨が続いていても心が腐っていかないような「防腐剤」になるのでした。
だから、ひたむきに前を見ていようよ、という一番を受けた歌詞になっているわけですが、
最後は「会えるだろう」「会えるはず」といった断定に近い表現ではなく、「会えるかな?」という疑問文になっています。
本当に会えるのか、桜井さん自身にも分からない。でも、前を向かないと、「会えるかも知れない」とかすかな希望を感じることすらできなくなります。
だから、ひたむきに前を見ようと訴えかけるのですが、それで虹が見えるよ、なんて自信を持っては言えない。
そんな心が揺らぎまくった状態で、サビに入っていきます。
空に架かる虹を今日も信じ
歩き続けよう
優しすぎる嘘で涙を拭いたら
虹はほらそこに
虹を信じて、とにかく歩き続けていこう。
その虹が何なのか、人によって違ってくるでしょう。
まだまだ雨が降り続けるかもしれないし、あと少しで止みそうなのかもしれない。もしかすると、雨が止むことはないのかもしれない。
でも、「きっと虹はかかるよ」と言い聞かせていこう。
そう信じ続けていけたら、もう虹に出逢える時は近いよ・・・。
過去は消えず
未来は読めず
不安が付きまとう
だけど明日を変えていくんなら今
今だけがここにある
きっと
虹はもうここにある
この曲を引っ提げて行われたのが、2016年のホールツアー「虹」でしたが、同時期に熊本地震があり、その影響で会場に行けなくなってしまった人たちへ、Mr.Childrenからこんなメッセージが発表されていました。
止まない雨はないです。
雨の後に虹が出ることもあります。
出ないかもしれない。
でも空に架かった虹を見逃さないために、
出来るなら下を向かず、
前を向いて、
空を見上げていてください。
ライブMCでも桜井さんは、熊本地震で被害に遭われた方々へのメッセージという意味合いがあると語っています。
人の力ではどうにもならないような自然災害。その過去は消えないし、不安ばかりが押し寄せるでしょう。
それでも、今を前向きに変えていくことができれば、虹に出逢うことができるはず・・・
そんな願いが込められたラストの歌詞だったのだと思います。
以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。