星になれたら~君と僕の物語~ ②
やっぱり、君はすごいや。
4年前、お笑い芸人を目指して東京へ旅立っていった、かつての大親友を思い出して思う。
僕もこの4年間、自分なりに頑張ってきたつもりだ。
でも、公立学校の教師という安定した仕事を目指してきた僕と違い、君は完全実力主義の不安定な仕事に、躊躇なく飛びこんだんだ。
本当にすごいと思う。
君が、養成所で出会った仲間と漫才コンビを組んだこと。
そして養成所を卒業して、正式に芸能事務所に入ったこと。
お笑いライブに少しずつ出られるようになってきたこと。
深夜のネタ番組で、数分だけネタをやらせてもらえたこと。
ネタ配信のYouTubeチャンネルが、初めて収益化できたこと。
そうやって、君は少しずつ、でも着実に、夢への階段を登っていった。
そのたびに、君は嬉しそうに電話で報告してくれた。
何かにつまずいた時はいつも、そんな君の頑張りを思い浮かべて、心を奮起させてきた。
半年前に教員採用試験に受かり、今日、僕は人生で初めて教壇に立つ。
教育実習の時とは違う。
プロとして、子どもたちの前に立つのだ。
教室から見える空に手をかざしてみる。
雲一つない大空は、人生の節目を迎える僕を、祝福してくれているような気がした。
教師として、今の自分に何ができるのか、まだよく分からない。
でもとにかく、自分の全てを出し切っていこう。
僕が教えられる全てを、子どもたちにぶつけてみよう。
そして、子どもたちと一緒に成長していければいい。
その時。
ふわっと優しい風が吹いた。
その風に乗って、遠くから登校中の子どもたちのはしゃぎ声が聞こえた。
いよいよだ。
僕は、4年前に君とグータッチして別れた時と同じように、空に向けて拳を突き出した。
この風はきっとどこかで君と繋がっているから。