ミスチル桜井さんが好きすぎて・・・

~目じゃないとこ耳じゃないどこかを使って見聞きをなければ見落としてしまうブログ~

Sign ~夢を追う2人を描いた、美くも儚い青春ソング~ 後編

こんにちは。

口笛少年です。

今回も、『Sign』の深読みをしていきます。

 

前編はこちら。

Sign ~夢を追う2人を描いた、美くも儚い青春ソング~ 前編 - ミスチル桜井さんの脳内を勝手に深読みしてみた (hatenablog.com)

 

※このブログに書かれていることは、あくまで個人的な見解です。

桜井さんの本意をあぶり出そうというよりは、私の勝手な解釈を楽しんでいただくためのものです。

なので、「なるほど!ちなみに私はこう思ってます!」といった意見の交流はぜひしてみたいのですが、「桜井さんはそんなこと言ってないはず!」みたいなおっかない非難はこのブログの趣旨に反するので、コメントを承認しない可能性があります。ご了承ください。

 

ということで、2番の歌詞から読んでいきましょう。

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〇たまに無頓着な言葉で汚し合って

互いの未熟さに嫌気がさす

でもいつかは裸になり甘い体温に触れて

優しさを見せつけ合う

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順調に愛を育んできた1番と違い、2番では2人の音符(おもい)の波長が合いません。

桜井さんの楽曲には、このように明と暗が対比される構成の曲が多いです。

例えば、まるで1本の恋愛映画のような、1組のカップルの出会いと別れが写実的に描かれたアルバム曲『ありふれたLove Story~男女問題はいつも面倒だ~』では、

1番…出会い

2番…離別

大サビ…旅立ち

という分かりやすい構成となっています。

「明」→「暗」とはなりますが、最後に「旅立ち」のような「救い」が入ることで、心地よく聞き終わることができます。

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〇似てるけどどこか違う だけど同じ匂い

身体でも心でもなく愛している

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  「無頓着な言葉」で心と心をぶつけ合って、その帳尻を合わせるように、身体を求めあった2人。

 そうやって、「愛」の形を追究していった時の心の迷い、思考の過程が、ここに繊細に描かれています。

 似ているけど、違って、でも同じ。

 文章にしてしまうと、全く整合性がとれていません。

 でも、「愛」ってそういうものなんだなと。

 論理的には説明が出来ない。

それが「愛」なんだと。

 「身体」「心」と簡単には表現しきれない、掴みどころがないものなのだと。

 

ちなみに『しるし』では、

左脳に書いた手紙

くしゃくしゃに丸めて捨てる

という歌詞がありますが、同じような意味なのでしょう。

 

せっかくなので、この桜井さんの歌詞における「愛」について、もう少し深堀りしてみましょう。

 

桜井さんの「愛」の定義の中で最も有名なのは、『名もなき詩』のこの歌詞でしょう。

愛はきっと奪うでも 与えるでもなくて

気が付けばそこにあるもの

 

また『NOT FOUND』では、こんな一文があります。

愛という 素敵な嘘で騙してほしい

 

さらには『【es】〜Theme of es〜』ではこう書かれています。

 「愛とはつまり幻想なんだよ」と

 言い切っちまった方がラクになれるかもなんてね

 

 一貫しているのは、愛とは実態のない、とらえどころのないものなのだということです。

 そして、数多くの恋愛ソングを書いてきて、「愛」という実態のないものについて誰よりも多く向き合ってきた桜井さんにとっては、そんなものをどう表現するかを難しく考えるより、「愛=幻想」なのだと言い切った方がラクになれるのかもしれないのですね。

さて、Signに戻りましょう。

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〇僅かだって明かりが心に灯るなら

大切にしなきゃ と僕らは誓った

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僅かな明かり・・・これは何を指すのか。

ドラマ「オレンジデイズ」では、ヒロインの沙絵がバイオリニストになる夢を諦めきれず、周りの友達の助けを借りながら、夢に向かって奮闘します。

しかし、聴覚障害がある沙絵にとって、それは茨の道であり、何度も挫折を繰り返しながら夢にしがみついていきます。

そういった、

実現困難な夢=僅かな明かり

ではないかと、ドラマの内容から推察できます。

 

またこの部分は、恋愛の場面以外にも投影できる要素が多いですよね。

諦めかけた夢でも、少しでも情熱が心に灯る限り、可能性が残っている限り、追い続けていこうよ。

そんな、かつての桜井さん自身のように、夢に向かって奮闘しているリスナーへの、応援歌でもあるのだと思います。

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〇めぐり逢った すべてのものから送られるサイン

もう 何ひとつ見逃さない 

そうやって暮らしてゆこう

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今までは、「君」のサインを「ボク」が受け取る、という構図でした。

しかしここで、「ボク」と「君」は一緒の視点で描かれています。

「僅かな明かり」かもしれない夢や目標に向かって、同じ方向を向いて歩んでいることが分かります。

 

1番で描かれた、ありふれた時間が愛しく思えたあの頃。

でも、そこに安住することなく、「僅かな明かり」を追っていきたい。

それも、君と一緒に・・・

 

そのために、僅かな希望を無駄にせず、奇跡を信じて生きていこう。

そうやって、一緒に夢を追っていこう。

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〇緑道の木漏れ日が君に当たって揺れる

時間の美しさと残酷さを知る

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緑道を「君」と一緒に歩いています。

ここで、時間の「美しさ」と「残酷さ」という相反する言葉が出てきます。

ここでの「美しさ」とは何でしょうか?

それは、刹那的なこの一瞬を感じること。

夢を追う途中の、キラキラした自分たち。

しかし、その日々とは、いつかは別れの瞬間がやって来る。

その夢が破れても叶ったとしても、夢を追う“途中”のキラキラした日々は必ずついえていくのです。

「美しさ」と同時に「残酷さ」も知ったということは、その「いつか」が、すぐそこにやってくると感じ取っていることを示唆していると思われます。

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〇残された時間が僕らにはあるから

大切にしなきゃと 小さく笑った

君が見せる仕草 僕を強くさせるサイン

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その「いつか」がもうすぐやってくるのかも知れない。

だからこそ、この一瞬を、残されたわずかな時間を、大切にしないといけない。

“時間の美しさ”を知り、“残酷さ”を悟ったからこそ、強く湧き出てきた想いなんですね。

そして、「君」という存在が、今まで「僕」を強くさせてくれたんですね。

 

この曲で「サイン」という歌詞は3回出てきます。

一番では、「僕に向けられているサイン」

二番のサビでは、「すべてのものから送られるサイン」

そして大サビでは、「僕を強くさせるサイン」

 

「向けられている」だけだったサインは、時を追うごとに僕を「強く」してくれた。

その過程には、「君」と「僕」が共に感じた「サイン」があった。

そんな日々を通して、君から向けられた「サイン」が僕の中で大きな意味を持つようになった。僕を強くさせてくれるようになった。

それだけ、僕にとって「君」は大きくて大切な存在になった。

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〇もう 何ひとつ見落とさない

そうやって暮らしてゆこう

そんなことを考えている

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時に美しく、残酷で、儚い存在である「時間」という存在。

そんな刹那的な「今」が発している全ての「サイン」を、「君」と一緒に最大限受け止めていきたい。感じ取っていきたい。

オレンジデイズ」では、主人公とヒロインとのすれ違いが続きます。

だからこそ、僅かな「サイン」を懸命に届けようと、受け取ろうともがいているのだと思います。

 

そんな、夢を追いながら共に進んでいく恋人同士に加えて、孤独と闘いながら夢を追う人へのメッセージソングだと、私は考えています。